まだある水頭症の原因
水頭症の原因となる疾患はまだあります。脳の器質的疾患によるものとしては脳腫瘍があります。つまり、腫瘍による圧迫によって、脳脊髄液の循環系が閉塞してしまうのです。特に危ないのは、中脳水道など狭い部分の閉塞となります。
クモ膜下出血も原因になります。クモ膜下出血(蜘蛛膜下出血)は、脳を覆っている3層の髄膜のうちの2層目と3層目の軟膜間の空間である「クモ膜下腔」に出血があって、そのために脳脊髄液中に血液が混入する疾患です。これは恐ろしい病気で、全脳卒中の8%、突然死の6.6%が該当するとされています。男性より女性が2倍多いとされ、特に50歳~60歳で好発します。
脳脊髄液は側脳室脈絡叢で産生されて、クモ膜顆粒で吸収されるわけですが、クモ膜下出血があると、クモ膜顆粒の機能が正常ではなくなり、水頭症になることがあります。脳圧の上昇は強くはありません。慢性の経過で神経症状が出るなら、正常圧水頭症であり、認知症に類似した高次機能の低下が目立ちます。
感染症では細菌性髄膜炎が該当します。これはクモ膜がトキソプラズマ等に感染した場合のことで、やはりクモ膜顆粒の機能が障害されて水頭症の原因になります。
早産児・低出生体重児にみられる脳室周囲白質軟化症などは該当しません。これは、その名の通りに脳室周囲の白質の障害で容積が減少し、その結果として脳室が拡大します。しかし、脳室、脳脊髄液側異常ではないので、水頭症ではありません。ただ、新生児の脳室内出血に伴って脳脊髄液循環の異常が生じることがあり、これは水頭症を発症する可能性があります。